2015年 03月 10日

ベテランベーシストと浦島太郎の関係

昨年のいつだったか覚えていないが、コンサートかライブの紹介文に
"a veteran bassist, Kiyoshi Kitagawa"と書かれてあるのを見て軽く不思議な思いがした。
自分ではまったく意識しなかったけれどもどうやら僕はもうベテランと呼ばれる域に達したようだ。
大阪でプロ活動を始めたのが関学在学中の19歳、そのままNYに渡る29歳まで
関西でまぁまぁ売れっ子ベーシストとして活動、そして渡米後もまぁまぁ売れっ子ベーシストとして
活動し今に至る、ということなんだけれど、そんな僕ももう56歳、キャリアからいっても
ベテランと呼ばれてもおかしくはないかもしれない。

浦島太郎は子供たちにいじめられていた亀を助けたお礼に竜宮城に招待され、歓待を受けた。
毎夜繰り広げられる宴に時の経つのも忘れて多いにエンジョイし、
帰るときにはお土産として大きな玉手箱なんかももらって
気分はルンルン、さてさて中には何が入ってるのかなぁ、と興味津々
開けてみると、中からモクモクと白い煙が立ち上り
太郎くん、いきなり白髪頭のじいさんに大変身しちゃった。
竜宮城で過ごした夢のような数日間は実際には数十年という長いものだったというお話。

もちろんこれはみんなよく知っている話だが、
僕は個人的にこの寓話(なにが教訓なのかいまひとつよくわからないのだが)に親近感を覚える。

NYに来たのが30歳(正確には29歳10ヶ月)、今もって気持ち的には当時となんら変わることはない。
日々の生活で自分の年齢を意識させられる場面が少ないので
極端に言えば56歳になった今も来た当時の30歳のままのような感覚がある。

こちらではみんなファーストネームで、それも年上であっても呼び捨て、
もちろん会話の中に尊敬語や謙譲語なんて使うわけもなく、
例えば僕の子供(僕には子供はいないが・・・)の歳くらいのミュージシャンからでも
"Hey Kiyoshi! What's up, bro?! Hey listen, I got a gig tomorrow. You wanna do it? No?
Oh, c'mon, man!"なんて言われたりする。
もちろん僕もそれなりのキャリアを積んでいるのできちんとリスペクトをもって
対応してくれるミュージシャンたちもいるが、基本的にはこんな感じだ。
これでどうやって自分の年齢を意識することができる???
ちなみにいつも一緒に演奏しているピアノのケニーバロン、彼は若いミュージシャンたちから
「Mr. Barron」と呼ばれるのが好きじゃないと言う。
理由は「自分が歳とったじいさんみたいに思えるから」だそうだ。

そんな僕も日本へ帰るたびに自分が着実に歳とっていってることを意識させられる。
日本ではとても当たり前のことだが、年上の人の名前を呼び捨てにすることはまずない。
「さん」付けは当然のこと、会話の中では見事に敬語がちりばめられ自分とその相手との
年齢関係が明確にされる。
日本滞在中は自分が「56歳の初老ベテランベーシスト」ということを否が応でも
意識させられて、ケニーバロンじゃないけど「歳とったじいさん」みたいな感覚になる。

NYが生活の場所なわけだから決してNYが「竜宮城」ではないんだけれど、
言葉や文化の違いが自分本来の日本人の感覚を狂わせて
知らず知らずのうちに浦島太郎くん状態になっているのかもしれない。

最後に一言、NYの呼び捨て文化も日本の敬語文化も両方ともいいものだと思っています。

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by kiyoshi-kitagawa | 2015-03-10 08:29 | thought


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